ひよこ風呂(仮)

元ジャニヲタで現ヅカヲタの観劇記です。たまに歌舞伎も

天は赤い河のほとり 3/31、4/1

WSSその2も2回目の観劇の感想も上げられないまま大劇場公演を迎えてしまいました。梅田公演までに何か書けたら書きます。と言って書けた試しはありませんが…。

 

さて、ゆりかちゃんまどかちゃんお披露目おめでとうございます、の大劇場公演に行ってきました。WSSに引き続いて「天は赤い河のほとり」は連載当時夢中になって読んでいた作品だったので、そりゃあもう発表時には飛び跳ねて喜びました。

 

当初私が予想(というか希望)していた主な男性陣の配役がこちら。

黒太子:愛ちゃん

ザナンザ:ずんちゃん

ルサファ:りく

カッシュ:そら

ミッタンナムワ:かける

 

一番譲れないのはかけるミッタンナムワだったんだけど(笑)、そこだけ外れました。でもあーちゃんはいいミッタンナムワでした。そしてかけるにタロスを持ってくるあたり、かけるの使い方は相変わらず間違えないなあと思います(神々とか)。

 

初日から漏れ聞こえてくる声に1割の期待と9割の不安を抱いてムラへ行きました。不安の割合が多すぎたせいか、結果的にはそこまで落ち込むこともありませんでしたがしかし、この作品は小柳先生の作品史上一番の駄作なのではないかと思います(初期の小劇場は未見のものもありますが、とりあえず大劇場作品を基準として)。

小柳先生が描きたかったのはナキアとウルヒ、そしてマッティワザとタトゥーキアなんだな、ということはよくわかりましたが、主役であるカイルとユーリの描かれ方の中途半端さに目を瞑ることはできません。特にユーリの「王の妃としての資質」について全く描かれていないことが私が一番引っかかった点でした。

原作ではティトが皇族の妃であるユーリを殺そうとした罪で死刑にされるところを、ユーリが「こんな時に使わないで何のための権力なのよ」と言って助けようとして、そこで初めてカイルはユーリが「人の上に立つ者の資質」を持っているのではないかと気が付くのですが、この舞台でそれらしきものというとミタンニ軍に人質として捕らわれたユーリがイル・バーニの制止を振り払ってマッティワザに無謀にも丸腰で襲い掛かり、なぜかいとも簡単にマッティワザの剣を奪い取って……え、まさかここなの?これがユーリの王妃としての資質を表していると言うの?と失笑しか生まれないこの場面だけです。初日の新聞記事だったかにユーリは「運動神経抜群」という記述を見かけた気がするのですが(プログラムかな?)、それで済ませるにはお粗末な演出だし(力業にはなっていない)、それが観客に「あり得ない」と思わせてしまうのは脚本の問題ですよね。

 

その点ではまだラムセスの方が、ユーリのその資質を見抜くチャンスがあるように描かれていると思えます。ミタンニ軍とヒッタイト軍の戦いの様子を探りに来たところ、女性達が危ない目に逢っているので思わず助けに入る、そこで出会ったユーリの(対マッティワザの)言動に「おもしろい女」だと感じ(台詞にはありません)、カイルに「俺がもらっちまうぜ」とだけ言い残してその場を去る。この時点ではおもしろ半分でちょっかいを出しただけ、というスタンスでいいと思うのですが、2度目の登場では倒れているユーリを見つけて「俺にもツキがまわってきた」と言うので本気だったみたいですね(笑)。それでもそこの急展開には目を瞑れます。その後が割と丁寧に描かれているからかな。ラムセス家の描写もほほえましく、舟のシーンもいい。その後ヒッタイト帝国のためにエジプト王宮にまで乗り込んで、見事証拠を掴んで来たユーリに惚れ直して「本当に俺の妻になる気はないか」と口説いて、また振られる。キキちゃんの演技のおかげもあるかと思いますが、ラムセスの描かれ方はこの尺でなら納得のできるものでした。 

その他のキャラクターにしても、原作ファンとしては全体的に「もったいない」という思いばかり浮かぶ1時間半でした。このお芝居ではラムセスが一番好きなキャラターでしたが、私は原作ではザナンザが好きで(と言うかザナンザのエピソードが好き)ずんちゃん演じるザナンザがユーリを初めて女性として意識した時のあの表情にもっとたくさんの観客の目がいくように演出してほしかったし(そうでないと犬死と言われてしまう)、三隊長の各エピソードが使われないのは仕方ないとしても、せっかく新しい設定を作ったタロスの心境も分かりにくかったです(ユーリでなくカイルを認めるという展開は良いと思います)。マッティワザの捨て台詞がいまいちかっこよく決まらないのはユーリの資質が描かれていないことに繋がるのですが、あそこはナディアが出てきた方が良かったのではないかと思います。

結局、原作を生かす為には1時間半では足りなかったという一言に尽きるのですが、それでもやると選択したのであればそれなりにまともなものを見せてもらえると、それだけ小柳先生には期待していたので残念な結果になりました。

つい先日まで雪組がトップコンビのお披露目公演をしていましたが、あのお芝居は好き嫌いや良し悪しは別としてトップコンビのために描かれた作品だったという点でとても満足のいくものだったので、そういう意味でも残念です。トップコンビ以外の組子にとっても、果たしてやりがいのある作品だったのだろうか…とさえ思ってしまいます。WSSや不滅がそうだったから今回はいいというものでもないだろうし。ただただ残念です。

 

脚本や演出への不満はどれだけ長く語っても止まらないのでそろそろで切り上げて、気になった方それぞれについて少しだけ。

まずキキちゃん。WSSのベルナルドは私が思い描いていたキャラクターと少し違っていて物足りなさを感じたのですが、今回はもう、脱帽。何がというと、台詞も歌詞もすごくクリアで、大劇場のあまり音響のよくない片方のスピーカーからしか音が聞こえないような席で見た時も、キキちゃんの台詞だけははっきりと分かりました。あれは凄い。役作りもとても良かったし、これから宙組でキキちゃんを見ることができるのが実感として嬉しくなりました。

ずんちゃんザナンザはただの優し気な仲の良い弟、というくらいにしか描かれていなかったのでが残念でしたが、謁見の場でのユーリを見つめる表情は切ないほどに想いが伝わってきました。すべてが安定しているスターさんなので、いつも何も心配はしていないのですがそろそろ何か転機が訪れて欲しいなと思っています。次のアニタがそうなるかしら。

 カッシュそらはあれだけアニタアニタ言ってた口で平気で言いますけど、男役の和希そら最高ですね!というビジュアルでした。三隊長ではカッシュが好きなので(だからこそそらにやってほしかったのだけど)あのビジュアルに仕上げてきてくれて嬉しかったです。じゅりちゃん演じるハディに鞭を取り上げられるところが一番萌えましたが、でもちゃんとウルスラは存在しているのよね、出てこないだけでね。

そんなじゅりちゃんはようこそ宙組へ!星組の時から好きな娘役さんだったので、これから宙組で見られるのが嬉しいです。りらちゃんが行ってしまったのは寂しかったけれど…。お顔の輪郭的に前髪があった方が美人度が上がると思ってるので、ハディはめたんこかわいかったです!!そしてネフェルトららちゃんもかわいくて、あおいさんのキャラクターもあってラムセス家は楽しい場面でした。

原作ファンとしてはもう少し色濃くビジュアルを作って欲しかったな、と思ったのは愛ちゃんマッティ。でも周りとのバランスかなあ、とも思ったり。ウルヒはもう少しなんとかならないかなあ…ナキアとのバランスが悪いように感じます。せーこちゃんのナキアは素晴らしいんですが、ナキアと言えば「私はネルガルとも手を結ぼう」という台詞が一番いただけなかったです。「宦官」という言葉を置き換える必要はないと思うのですが、ネルガルという固有名詞はさすがに置き換えた方が良いかと思います…と最後は結局脚本へのダメ出しになってしまいましたが、東京公演に向けてあまり改善は望みません。どうも上手くいく気がしないからです。と言いつつも、その予測を裏切ってくれることもどこかで期待している自分がいます。それくらい小柳先生のことは信頼していたからです。

 

本当にお披露目公演としては演者の力がもったいないな、と思う作品になってしまいましたが、これからまかまど時代は長く続くと思っているのでこれにめげずに良きトップコンビになっていってくれることを期待しています、応援しています。